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お米と日本人 ちまき【JAコラム】

2021年05月23日コラム

伝承料理研究家●奥村彪生

私が子どもの頃、5月5日の節句に歌われていた歌があります。「柱の傷はおととしの 5月5日の背くらべ ちまきたべたべ兄さんと 測ってくれた背の丈」です。

私の田舎の家の柱にもその傷跡が残っています。兄と背比べしてナイフで入れた傷で、それがおやじに見つかり大目玉を食らいました。

この5月の節句に欠かせなかったのがちまきでした。前日の4日に白米を洗ってざるにあげて乾かし、夜なべで手回しの回転式ひき臼でひいて粉にしました。この仕事は子どもの役目。ちまきを包むアセ(アシ)は海辺にたくさん自生しており、その若葉を摘んでくるのも4日。他にイビツ(サンキライ)の葉も摘みました。

作るのは母や姉たち。米の粉を湯で練り、長い角形にしてアセの葉で美しく包み、湿らせたイグサで線状に巻き締め、それを蒸すのでした。ちまきを食べる風習は中国大陸江南の稲作地帯が起源で奈良時代に大和地方に伝わっていたようです。

砂糖を忍ばせたきな粉を付けて食べましたが、もう一つの楽しみはイビツ餅。一般にいうかしわ餅です。そのあんも自家栽培の小豆をゆでてざるでこし、こしあんにしました。これは湯練りした米の粉の生地を蒸し、よくこねてから小分けにしてあんを包み、イビツの葉で挟んで再び少時蒸しました。イビツの葉の甘い移り香は食べると心身が爽やかになりました。あの頃のちまきもかしわ餅も生地はプチッとして歯切れはリズミカルでしたけど、現在のはどちらもやんわりとしています。かみ締める力が弱くなったのでしょうか。

ササやアシ、木の葉で包むと見目麗しい上に、これらが放つ香気が食物を腐敗から守る働きをしているのです。長い暮らしの中で人々が編み出した知恵。コロナ禍の今年は手作りにしませんか。

JA広報通信4月号より

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